愛犬の健康を守るための混合ワクチン。
「5種混合」「8種混合」「10種混合」… 種類がたくさんあって、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。
「多い種類を打てば、安心なの?」「室内飼いなら、少ない種類でいい?」
混合ワクチンは、愛犬の「生活環境」や「行動範囲」に合わせて選ぶことが最も大切です。
必要以上に多い種類を接種することは、愛犬の体に負担をかけることにもなりかねません。
この記事では、混合ワクチンが予防する病気の種類と、愛犬のライフスタイルに合わせた最適なワクチンの選び方を、分かりやすく解説します。
混合ワクチンが予防する病気の「2つのグループ」
混合ワクチンは、致死率の高い「コアワクチン」と、生活環境によって接種が必要になる「ノンコアワクチン」の2つのグループに分類されます。
コアワクチン(すべてのわんちゃんに必須)
コアワクチンは、感染力や致死率が高く、世界中で接種が強く推奨されているワクチンです。
室内飼いや外出が少ないわんちゃんも含め、すべてのわんちゃんに接種が強く推奨されます。
| 病気の名前 | 危険性 | 主な症状 | 予防できる混合ワクチン |
| 犬ジステンパー | 致死率が高い。 | 神経症状や肺炎を引き起こす。 | 5種以上すべてに含まれる。 |
| 犬パルボウイルス感染症 | 特に子犬の致死率が高い。 | 激しい嘔吐と血便を伴う。 | 5種以上すべてに含まれる。 |
| 犬アデノウイルス感染症 | 特に子犬は致死率が高い | 肝炎や伝染性の高い咳(ケンネルコフ)を引き起こす。 | 5種以上すべてに含まれる。 |
ノンコアワクチン(ライフスタイルで選ぶ)
ノンコアワクチンは、特定の地域や特定の生活環境(ドッグラン、キャンプ、水場など)で感染リスクが高まる病気を予防します。
| 病気の名前 | 危険性 | 感染リスクの高い環境 | 予防できる混合ワクチン |
| 犬パラインフルエンザ | ケンネルコフ(風邪のような症状)の原因の一つ。 | ドッグラン、ペットホテルなど、犬が集まる場所。 | 5種以上に含まれることが多い。 |
| 犬レプトスピラ症 | 人間にも感染する人獣共通感染症。腎臓・肝臓に重い障害。 | 水たまり、河川敷、農地など(ネズミの尿)。 | 6種、8種、10種に含まれる。 |
混合ワクチンの「種類別」の違い
日本で主に接種される混合ワクチンは、予防する病気の数によって「5種、6種、8種、10種」などに分かれています。
種類の違いは、主にレプトスピラ症の予防数です。
5種・6種混合ワクチン
コアワクチン(3種)+パラインフルエンザ(1種)に、さらに1~2種類を加えたものです。
- 5種:コアワクチンとパラインフルエンザを予防。
- 6種:5種に、レプトスピラ症を1種類加えたものが多い。
【おすすめのわんちゃん】
- 室内飼いが主で、散歩は舗装された道路のみ。
- ドッグランやわんちゃんの多い場所にはほとんど行かない。
- 体への負担を最小限に抑えたい。
8種・10種混合ワクチン
コアワクチンとパラインフルエンザに加え、レプトスピラ症を複数種類(2〜4種類)予防します。
- 8種・10種:レプトスピラ症は、血清型(種類)が多く、住んでいる地域や生活環境によってどの血清型に感染するかが異なります。
これらのワクチンは、複数の血清型をカバーします。
【おすすめのわんちゃん】
- 河川敷、湖、山、田んぼの近くなど、自然の中を散歩する。
- 水遊びが好きで、水たまりや湿った場所によく触れる。
- キャンプや旅行など、行動範囲が広い。
愛犬に最適なワクチンの「選び方」
最適なワクチンを選ぶためには、以下の2つのステップで愛犬の生活環境を評価することが重要です。
レプトスピラ症のリスクを判断する
レプトスピラ症は人にも感染する危険な病気で、多種混合ワクチンを選ぶかどうかの最大の判断基準になります。
| リスク | 愛犬の生活環境 | 推奨されるワクチン |
| 低 | 都会の舗装路のみ、マンション内で生活、他の動物との接触が少ない。 | 5種など(コアワクチン中心) |
| 高 | 田舎、山、川、湖が近い。公園の草むらに入る。ネズミの目撃情報がある。 | 8種、10種など(レプトスピラ含む) |
ワクチンの接種回数を決める(1年 vs 3年)
混合ワクチンは、現在「3年に1回」の接種も可能ですが、レプトスピラ症を含むワクチンは「効果の持続期間が短いため、毎年接種が必要」です。
| 接種間隔 | 予防する病気 | 特徴 |
| 毎年1回 | レプトスピラ症を含む多種混合。 | 効果が切れやすいため、毎年接種が必要。レプトスピラ症のリスクが高いわんちゃんに。 |
| 3年に1回 | コアワクチンのみ。 | 効果の持続期間が長いため。レプトスピラ症のリスクが極めて低いわんちゃんに。 |
【獣医師への相談が不可欠】
「うちは8種でいいですか?」と聞くのではなく、「うちは川辺でよく遊ぶのですが、8種と10種で、この地域で流行している型はどちらで予防できますか?」など、具体的な環境を伝えて相談しましょう。
ワクチン接種の際の注意点!
ワクチンの種類にかかわらず、接種の際は常に愛犬の体への負担を考慮することが大切です。
ワクチンの「組み合わせ」に注意
- 混合ワクチンと狂犬病ワクチンは1ヶ月以上空けるという原則を守りましょう。
- レプトスピラワクチンは、他のワクチンに比べて副反応(アレルギー)が出る可能性がやや高いとされています。
体調が良い時に接種し、接種後は特に注意深く観察してください。
接種後の体調管理
- 接種当日は激しい運動を避け、安静に過ごさせます。
- 接種後、顔の腫れや呼吸困難などの重篤な副反応が見られた場合は、すぐに病院に連絡してください。
まとめ:最適なワクチン選びのための3つの質問!

| 項目 | 飼い主が自問すべきこと | 決定する内容 |
| 環境リスク | 愛犬は水辺、草むら、山、田んぼの近くで遊ぶか? | レプトスピラ症を含む(8種以上)か、含まない(5種)かを決める。 |
| 接種頻度 | レプトスピラのリスクをどう評価するか? | 毎年接種(リスクが高い場合)か、3年に1回(リスクが低い場合)かを決める。 |
| 最終決定 | この地域の流行状況は? | 獣医師に愛犬の生活環境を伝え、最適な種類とスケジュールの最終確認を行う。 |
混合ワクチンの選び方は、「安心だから」と種類が多いものを選ぶのではなく、愛犬の生活環境に必要なものだけを選ぶことが、愛犬の体を守るための最も賢明な方法です。
獣医師としっかりコミュニケーションを取り、愛犬に最適なプランを選んであげてくださいね。


