
最近、ドッグランデビューさせたばかりなのに、
急に乾いた咳をし始めた…

ただの風邪なのか、それとももっと深刻な病気なのか、判断がつかない…
犬パラインフルエンザウイルス(CPIV)は、わんちゃんの上部気道(喉や気管)に感染し、
激しい咳を主症状とする「犬伝染性気管気管支炎(ケンネルコフ)」の主要な原因ウイルスです。
このウイルスは、それ単体では重症化しないことが多いものの、その高い感染力と、他の病原体(特にボルデテラ菌)と手を組んで症状を悪化させる特性から、特に免疫力の弱い子犬にとっては警戒すべき対象です。
この記事では、CPIVの恐ろしい感染の広がり方、飼い主さんが最も不安になる特徴的な咳の正体、そして愛犬の命と健康を守るために混合ワクチンが果たす役割を徹底解説します。
CPIVが「ケンネルコフ」を引き起こす仕組み!
犬パラインフルエンザウイルスは、ケンネルコフの原因として、他の病原体と密接に関わりながら症状を進行させます。
伝染性気管気管支炎の「火付け役」
ケンネルコフは、CPIV、犬アデノウイルス2型、そして細菌のボルデテラ・ブロンキセプティカ菌など、複数の病原体が複合的に関与して発症します。
- CPIVの役割: まずCPIVが気道に感染することで、気管や気管支の粘膜を傷つけ、
免疫防御機能を低下させます。 - ボルデテラ菌の侵入: 粘膜が傷ついたところに、環境中に存在するボルデテラ菌などの細菌が二次的に感染することで、咳の症状がしつこく、激しくなります。
極めて高い「空気感染力」
CPIVは、わんちゃんから、わんちゃんへの感染力が非常に強く、一度施設に入り込むとあっという間に広がるのが特徴です。
- 感染経路: 感染犬の咳やくしゃみによる飛沫が空気中を漂い、それを他のわんちゃんが吸い込むことで感染します(空気感染/飛沫感染)。
- 集団施設の注意点: そのため、ペットホテル、ドッグラン、トリミングサロン、パピークラスなど、わんちゃんが集まる場所は、感染リスクが非常に高くなります。
子犬のリスクと肺炎併発の恐怖
成犬であれば比較的軽症で済むことが多いですが、免疫力が未熟な子犬は、CPIVと細菌の複合感染により、症状が重篤化しやすいです。
- リスク: 気管支の炎症が肺にまで広がり、肺炎を併発すると、呼吸困難や高熱を引き起こし、命に関わる事態に陥る危険性があります。
ケンネルコフの「特徴的な咳」と症状!
CPIV感染の主な症状は、その咳の仕方にあります。
潜伏期間は通常3〜10日程度です。
特徴的な咳の音
- 乾燥した、激しい咳: 「カーッ」「ゲホゲホ」という、喉の奥に何かが引っかかったような、乾いた刺激性の強い咳が突然出ます。
- 嘔吐と間違えやすい仕草: 咳があまりにも激しいため、飼い主さんは愛犬が何かを吐き出そうとしているように見えることがあります。
- 刺激への反応: 興奮したとき、散歩でリードを引っ張られたとき、急な温度変化があったときなど、外部からのわずかな刺激によって咳が誘発されやすいのが特徴です。
咳以外の症状
多くの場合、元気や食欲は保たれますが、複合感染や重症度によっては以下の症状が見られます。
- 軽い発熱
- 鼻水、くしゃみ
- 目やに
- 重症化時: 食欲不振、元気消失、呼吸が苦しそうな様子が見られた場合は、肺炎などの重篤な状態が疑われます。
愛犬が咳をし始めた時の「家庭での対処法」
激しい咳は愛犬を苦しめ、飼い主さんの不安も煽ります。
咳が止まらないときに、ご家庭でできる対処法と、注意すべきポイントを理解しておきましょう。
気道の刺激を避ける
- 首輪からハーネスへ変更: 散歩中に首輪で喉を圧迫すると咳が出やすくなるため、咳が治まるまでは胴体に力がかかるハーネスを使用しましょう。
- 興奮を鎮める: 咳は興奮によって誘発されるため、激しい遊びや運動は控え、安静に過ごせるよう静かな環境を整えてください。
喉の乾燥を防ぐ
- 加湿の徹底: 部屋の湿度を50〜60%程度に保ち、喉の粘膜の乾燥を防ぐことで、
咳を和らげる効果があります。
加湿器を使用したり、濡らしたタオルを干したりして加湿を試みましょう。 - 刺激物の排除: タバコの煙、強い洗剤や芳香剤のニオイ、ホコリなどは、気道を
刺激するため、室内から排除してください。
判断に迷ったらすぐに獣医師へ
ケンネルコフの症状は通常自然に治りますが、子犬やシニア犬、咳の期間が長引く場合は、
必ず動物病院を受診してください。
- 受診の目安:
- 激しい咳が3日以上続く場合。
- 咳に加えて発熱、食欲不振、ぐったりしているなど、全身症状が見られる場合。
- 呼吸が速い、苦しそうな場合(肺炎の可能性)。
CPIV感染を断つ「予防接種の重要性」
CPIVは混合ワクチンで予防できる病気であり、予防接種が最も確実で重要な対策となります。
混合ワクチンへの組み込み
CPIVは、わんちゃんの健康維持に重要な「コアワクチン」(全ての犬に推奨されるワクチン)ではないものの、多くの混合ワクチン(5種、8種など)の成分として含まれています。
- 目的: CPIV感染と、それによる二次的な細菌感染(肺炎)を防ぐために接種されます。
愛犬のライフスタイルに合わせた接種
特に以下のような感染リスクの高いわんちゃんは、CPIVワクチンの接種を欠かさないことが
重要です。
- 集団施設を利用するわんちゃん: ドッグホテルや保育園、パピークラスなど、他のわんちゃんと定期的に接触する機会が多い。
- 多頭飼育のわんちゃん: 一頭が感染すると、あっという間に全頭に広がる危険性があります。
定期的な追加接種
CPIVに対する抗体価(免疫力)を維持するため、成犬になっても獣医師の指示に従い、
定期的な追加接種(通常1年に1回)を必ず行ってください。
まとめ:CPIVとケンネルコフから愛犬を守る「3つの対策」

| 項目 | CPIVの特性 | 飼い主が守るべき行動 |
| 感染経路 | 飛沫感染力が非常に強く、 集団施設で一気に広がる。 | 集団施設を利用する犬は、CPIVを含む混合ワクチン接種を欠かさない。 |
| 症状 | 「カーッ、ゲホゲホ」という激しい咳が特徴。 子犬は肺炎のリスクがある。 | 咳が出たらハーネスに変更し、部屋を加湿して喉の乾燥を防ぐ。 |
| 受診判断 | 咳は自然に治ることもあるが、二次感染に注意が必要。 | 咳が長引く、または 発熱や元気消失が見られたら、速やかに動物病院へ。 |
犬パラインフルエンザウイルスによるケンネルコフは、予防接種と日々の環境管理でリスクを大きく下げることができます。
愛犬を咳の苦しさから守り、重症化を防ぐためにも、ワクチン接種と体調管理を徹底しましょう。合ワクチンで予防できます。


