
散歩中に愛犬が突然ぐったりし始めた。
これはただの疲れ?
それとも熱中症?

急いで水を飲ませて体を冷やしたけど、
正しい方法だったか不安…
高温多湿な環境下では、愛犬の命を脅かす「熱中症(Heatstroke)」のリスクが常に潜んでいます。
特に短頭種(パグ、ブルドッグなど)や、心臓疾患を持つわんちゃんはハイリスクです。
熱中症は、体温調節機能が破綻し、わずか数十分で多臓器不全や脳障害を引き起こす、極めて危険な緊急事態です。
適切な応急処置ができるかどうかで、愛犬の命運が分かれます。
この記事では、まず「熱中症」と「単なる脱水」の決定的な見分け方を解説します。
次に、愛犬の命を救うための「緊急クーリング(冷却)の3つの鉄則」を具体的に解説します。
そして最後に、愛犬を病院へ搬送するまでの正しい処置と判断基準を徹底解説します。
熱中症と脱水の決定的な「3つの見分け方」
愛犬がぐったりしているとき、その症状が熱中症によるものか、脱水によるものかを見極めることが最初のステップです。
体温:熱中症の最も明確なサイン
- 正常体温: わんちゃんの平熱は人間よりやや高く、約38.0℃〜39.0℃です。
- 熱中症の危険水域: 体温が40.0℃を超え始めたら、熱中症を強く疑う必要があります。
41.0℃以上は、緊急事態であり、細胞の損傷が急速に進みます。 - チェック方法: 肛門から測る直腸温が最も正確ですが、緊急時は脇や股の間に人間用の体温計を挟むだけでも目安になります。
意識・運動能力:熱中症(重度)の判断基準
- 脱水: 水分を欲しがり、ぐったりしていても、意識は比較的はっきりしていることが多い。
- 熱中症(重度):
- 呼吸: ハァハァ(パンティング)が次第に弱まり、不規則になる、または止まる。
- 意識: 呼びかけに反応しない、虚ろな目つき、痙攣(けいれん)を起こす、失禁する。
- 運動: 立ち上がれない、ふらつきがひどい。
- 呼吸: ハァハァ(パンティング)が次第に弱まり、不規則になる、または止まる。
粘膜と皮膚の張り:脱水のチェックポイント
脱水の程度は、「歯茎(歯肉)の色」と「スキン・テント・テスト」で判断できます。
- 歯茎のチェック: 唇をめくり、歯茎の色を確認します。
- 正常: 健康的なピンク色。
- 脱水・熱中症: 赤みが強い(チアノーゼ)、または逆に青白い。
指で押して白くなった部分が、2秒以上経ってもピンク色に戻らない(CRT:毛細血管再充満時間が延長)。
- 正常: 健康的なピンク色。
- スキン・テント・テスト: 首の後ろや背中の皮膚を軽くつまみ上げます。
- 正常: すぐに元に戻る。
- 脱水: つまんだ状態のまま、テントのようにしばらく残ってしまう。
- 正常: すぐに元に戻る。
命を救う!緊急クーリングの「3つの鉄則」
熱中症が疑われたら、一刻を争う「冷却」を開始します。
病院へ運ぶ前に体温を下げることが、生存率に直結します。
鉄則1:すぐに「涼しい場所」へ移動し、体を濡らす
- 移動: 直射日光の当たらない、風通しの良い日陰や、クーラーの効いた室内へ移動させます。
- 水をかける: 常温(ぬるま湯程度)の水道水を、愛犬の体全体に大胆にかけます。
水温が冷たすぎると血管が収縮し、熱の放散を妨げます(後述)。
鉄則2:冷却の「優先部位」に集中する
全身を冷やすことが重要ですが、以下の3つの「動脈が体表近くを通る部位」を重点的に冷やすことで、体温を効率よく下げることができます。
- 首筋(頸動脈)
- 脇の下(腋窩動脈)
- 股(大腿動脈)
- 方法: これらの部位に、濡らしたタオルや保冷剤(タオルで包む)を当て、水をかけながら冷却を続けます。
鉄則3:クーリングは「体温が39.5℃になるまで」続ける
- NG行動(氷水・急激な冷却): 氷水や極端に冷たい水を使うと、皮膚表面の血管が収縮し、
かえって体内の熱が放出されにくくなります(末梢血管収縮)。
また、愛犬に不快感を与え、心臓に負担をかける危険もあります。 - 冷却停止の目安: クーリングを開始したら、体温が39.5℃程度に下がるまで続けます。
熱中症のダメージを受けた体は、低体温症にもなりやすいため、39.5℃を下回ったら、すぐに冷却を中断し、体温を維持するように努めます。
クーリング後の処置と病院へ運ぶ判断!
体温を下げた後も、愛犬の体内では臓器へのダメージが進行している可能性があるため、
必ず動物病院での専門治療が必要です。
水分補給の注意点
- 意識がはっきりしている場合: 自分で飲めるようであれば、常温の水または犬用の経口補水液を少量ずつ与えます。
- 意識がない場合: 絶対に無理に水を飲ませてはいけません。誤嚥(ごえん)により、水を肺に入れてしまう危険があります。
病院へ運ぶ際の注意点
- 冷却の継続: 病院へ搬送中も、体を濡らしたタオルなどで包み、車内のエアコンを最大にするなどして、体温の上昇を防ぎながら運びます。
- 連絡: 病院に到着する前に必ず電話で連絡を入れ、「熱中症の症状」「現在の体温」「行った応急処置」を伝えます。
これにより、病院側はすぐに点滴や酸素吸入などの準備に取りかかることができます。
まとめ:熱中症緊急対応の「命を救う3ステップ」

| ステップ | 目的と最優先事項 | 処置の具体的な内容 |
| 1. 状況判断 | 熱中症か脱水かを見極める。 | 体温が40℃以上、意識が 虚ろ、歯茎のピンク色が 2秒以上戻らないことを 確認。 |
| 2. 緊急クーリング | 体温を急いで下げ、 臓器を守る。 | 常温水を全身にかけ、首・脇・股を重点的に冷やす。39.5℃で冷却を止める。 |
| 3. 病院へ搬送 | 専門治療で多臓器不全を 防ぐ。 | 冷却を継続しながらすぐに病院へ連絡し搬送。意識のないわんちゃんに無理に水を飲ませない。 |
熱中症は「予防」が最も重要ですが、もしもの時はこの緊急対応を知っていることが、愛犬の命を救う鍵となります。
夏季だけでなく、室内の温度管理も含め、日頃から愛犬の体調変化に細心の注意を払いましょうね。


