
今朝まで元気に歩いていたのに、
急に後ろ足を引きずり始めた…

立ち上がろうとするとキャンと鳴いて震えるのは、
ただの腰痛?
愛犬が「歩けない」「立てない」という突然の麻痺状態に陥ると、飼い主としては大きなパニックに襲われます。
その原因として最も多く、そして早期の対応が必要とされるのが、「椎間板ヘルニア(ついかんばんヘルニア)」です。
椎間板ヘルニアは、背骨の間にあるクッション(椎間板)が飛び出し、脊髄を圧迫することで、激しい痛みや麻痺を引き起こす病気です。
特に胴が長く、足が短いダックスフンドやコーギーなどの犬種では、日常的な動作やジャンプで発生しやすく、その進行度によっては緊急手術が必要となります。
不適切な対応、特に「痛みを我慢させて無理に動かす」ことは、症状を致命的に悪化させる可能性があります。
自宅での「絶対安静」は、愛犬の脊髄を守り、回復の可能性を高めるための最も重要な初期対応となります。
この記事では、まず椎間板ヘルニアの進行度別サインと、特に見落とされやすい初期の痛みサインを解説します。
次に、緊急度の判断基準と、愛犬の回復を左右する自宅での「絶対安静」を保つための具体的な方法を徹底解説します。
進行度別に見る!椎間板ヘルニアの「麻痺サイン」
椎間板ヘルニアの症状は、脊髄の圧迫度合いによって5段階に分けられます。
飼い主さんは、愛犬がどの段階にあるかを正確に判断する必要があります。
| グレード | 症状の度合い | 愛犬の行動 (サイン) | 緊急度 |
| グレード1 | 軽度の痛みのみ | 背中や首を触るとキャンと鳴く、震える、いつもより元気がなく座りたがる。 | 要観察・厳重安静 |
| グレード2 | 軽度の麻痺 | 足を引きずり(跛行)、ふらつきながらも自分で歩ける。走ったりジャンプしたりできない。 | 緊急受診推奨 |
| グレード3 | 重度の麻痺 | 自分で立つことはできるが、すぐに倒れる。歩行困難。 | 【緊急事態】 |
| グレード4 | 運動機能の完全喪失 | 麻痺した足を全く動かせない。自力で立つ、歩くことが不可能。 | 【超緊急事態】 |
| グレード5 | 深部痛覚の喪失 | 麻痺に加え、足をつまんでも痛みを感じない。 | 【極めて危険】 |
(グレード分類や処置の判断は、かかりつけの獣医師にご相談ください。)
見落としやすい「初期の痛み」サイン
グレード1の初期段階は、飼い主が見落としやすく、この時期に無理をさせると急激に悪化します。
- 震え: 特に後肢や体幹に力が入らず、小刻みに震えている。
- 拒否: 階段の上り下り、ソファへのジャンプ、抱っこなど、特定の動作を極端に嫌がる。
- 不自然な姿勢: 頭を下げて背中を丸める、足を揃えて座る(おしっこを我慢しているような姿勢)。
愛犬の命運を分ける「絶対安静」の徹底法!
椎間板ヘルニアの治療において、自宅での絶対安静(ケージレスト)は、手術や投薬と同等、あるいはそれ以上に重要です。
安静を保つことで、炎症と腫れを抑え、脊髄の回復を促します。
ケージレスト(クレートレスト)のルール
- 期間: 獣医師の指示に従いますが、通常は2週間〜1ヶ月間の徹底的な安静が必要です。
- 行動範囲の限定: クレートや小さなサークルの中に限定します。
体を動かすスペースを最小限にし、立ち上がったり歩いたりする行動を物理的に制限します。 - NG行動: 抱っこして連れ歩くのも、抱き上げる際の姿勢で背骨に負荷がかかるため、可能な限り避けます。
移動は担架やバットのような硬い板に乗せて行います。
二次的な怪我を防ぐ環境整備
- 滑り止め: 床(フローリング)は愛犬が滑って症状を悪化させる最大の敵です。
愛犬の周囲の床には、滑り止めマットやカーペットを敷き詰めます。 - 排泄のサポート: 自力でトイレに行けない場合や、麻痺で排泄感覚が鈍っている場合は、オムツやペットシーツを使って、愛犬が動かずに排泄できるようにサポートします。
麻痺の進行度と、緊急度の判断!
グレード3以上の麻痺、特にグレード5(深部痛覚の喪失)は、緊急手術の判断が求められる重篤な状態です。
「深部痛覚」のチェック方法
- 方法: 麻痺している足の指先を、強めに、しかし慎重につまみます。
- 判断:
- 痛みを感じる(すぐに足を引っ込める、鳴く): グレード4以下(まだ神経が生きている)。
- 全く反応がない、または指を引っ込める反射(表面痛覚)はあるが鳴かない: グレード5の可能性大(深部痛覚喪失)。
- 痛みを感じる(すぐに足を引っ込める、鳴く): グレード4以下(まだ神経が生きている)。
【注意】 深部痛覚が喪失している場合、48時間以内に外科手術を行わないと、回復の見込みが著しく低くなると言われています。
この症状が見られたら、深夜・休日を問わず、すぐに緊急病院へ向かう必要があります。
再発予防のための、生活習慣
一度ヘルニアになったわんちゃんは、再発リスクが非常に高くなります。
- 体重管理: 肥満は椎間板への最大の負担となります。
常に理想体重を維持することが、最良の予防法です。 - ジャンプの禁止: ソファやベッドへの飛び乗り・飛び降りは、背骨に強い衝撃を与えるため必ずスロープや階段を設置して使用させます。
- 抱っこの方法: 抱き上げる際は、背骨が曲がらないように、片手でお尻を、もう片手で胸を支え、体をまっすぐに保って抱き上げます。
まとめ:椎間板ヘルニア対応「3つの鉄則」

| 鉄則 | 目的と判断基準 | 飼い主がすべき 具体的な行動 |
| 1. 症状の把握 | 軽度の痛み(震え、拒否)を絶対に見逃さない。 | 足を引きずったり、キャンと鳴いたりしたら、すぐに安静を開始する。 |
| 2. 絶対安静の徹底 | 脊髄の炎症と腫れを抑え、 回復を促す。 | クレートレストを徹底し、2週間は散歩や運動を完全に禁止する。 |
| 3. 深部痛覚の確認 | 緊急手術が必要な危険な状態かを判断する。 | 足の指先をつまみ、痛みを感じるかどうかを確認し、直ちに獣医師に伝える。 |
愛犬の麻痺は飼い主にとって大変な試練ですが、冷静に症状を見極め、「絶対安静」を徹底することで、愛犬の回復への道を力強くサポートしてあげましょうね。
「本記事は、複数の動物行動学および獣医学の専門家の知見に基づき構成されています。」


