
飼い主さん
急にキャンと鳴いて、片足を地面につけなくなった…

飼い主さん
高いところから落ちてしまったけど、どこを怪我しているかわからない…
愛犬の骨折や脱臼は、飼い主にとって最も恐ろしい緊急事態の一つです。
愛犬が痛みで鳴き叫んだり、震えたりする姿を見ると、誰でもパニックになってしまいます。
しかし、このような時こそ、飼い主の「冷静な行動」が愛犬のその後の回復を大きく左右します。
骨折や脱臼で怖いのは、骨折端(折れた骨の鋭利な部分)が、皮膚や血管、神経を傷つけ、
二次的な重度の損傷を引き起こすことです。
この記事では、愛犬の骨折・脱臼を示す明確な3つのサインを学び、事故直後に絶対にやってはいけないこと、そして安全に患部を固定しながら動物病院まで搬送するための具体的な手順を、
ステップごとに徹底解説します。
骨折・脱臼を知らせる「3つの明確なサイン」
愛犬が激しい痛みを訴えた場合、以下の3つのサインがないかを落ち着いて確認してください。
異常な体重のかけ方・跛行(はこう)・挙上(きょじょう)
- サイン:
- 足を地面につけようとしない(常に上げたまま)。
- 地面につけても、すぐに持ち上げる(跛行、またはスキップのような歩き方)。
- 脱臼の場合、特に後ろ足に多く、歩行時にガクッと力が抜けたように見える。
- 注意点: 骨折・脱臼の程度により、全く足を使えない「完全挙上(かんぜんきゅじょう)」の場合と、軽く引きずる「跛行(はこう)」の場合があります。
体の異常な変形と腫れ
- サイン:
- 患部が不自然な方向に曲がっている、または垂れ下がっている。
- 触らなくても、その部分の腫れや熱が確認できる(内部で出血や炎症が起きている
証拠)。 - 小型犬の場合、脱臼した関節(膝や股関節)を触ると「ポコッ」とした違和感を
感じることがある。
- 患部が不自然な方向に曲がっている、または垂れ下がっている。
激しい痛みと異常な警戒心
- サイン:
- 触ろうとしただけで「キャン!」と鋭く鳴く、または唸る。
- 体が震えている、呼吸が速い(パンティング)。
- 普段は大人しい愛犬でも、痛みのあまり噛みつこうとする
(パニックになっているため、安全確保が必要)。
- 触ろうとしただけで「キャン!」と鋭く鳴く、または唸る。
事故直後に「絶対にやってはいけないこと」
飼い主が良かれと思って行った行動が、二次的な損傷を招くことが少なくありません。
まずは、以下の行動を厳禁してください。
素人判断での整復(元に戻そうとする)
- 厳禁: 脱臼しているように見えても、絶対に飼い主が引っ張ったり、押し込んだりして元に
戻そうとしないでください。
神経や血管を傷つける危険性が極めて高いです。
過剰に触る、マッサージする
- 厳禁: 痛がる患部を何度も触ったり、さすったりすると、愛犬の痛みが増すだけでなく、
折れた骨が動き、周りの組織を傷つける可能性があります。
患部は最低限の確認にとどめてください。
水分や食事を与える
- 厳禁: 病院では麻酔下でレントゲン撮影や整復処置が必要になることが多いため、
誤飲・誤嚥(ごえん)を防ぐためにも、直前の水や食事は与えないでください。
二次損傷を防ぐ「安全な運び方」
骨折・脱臼の処置は、「患部を動かさず、全身を固定した状態で運ぶこと」が最重要です。
患部を安定させる
- 原則: 患部を完全に固定するために、添え木(スプリント)をしたいところですが、
不慣れな場合は逆に危険です。
添え木をするよりも、「全身を動かさないように運ぶ」ことを優先します。 - 出血がある場合: もし骨が飛び出すような開放骨折で出血している場合は、
清潔なガーゼやタオルで患部を抑え、止血を試みてください。
全身を固定して運搬する
運搬の途中で愛犬が暴れたり、動いたりすると、患部が動き、状態が悪化します。
| 愛犬のサイズ | 運搬に最適な道具 | 運搬時のポイント |
| 小型犬・中型犬 | クレート(キャリーケース)、丈夫な段ボール箱。 | クレート内にタオルを 敷き詰め、体全体が動かないように優しく固定する。 |
| 大型犬 | 硬い板(まな板やベニヤ板)、厚手のバスタオル。 | バスタオルをハンモック状にして、二人で持ち上げます。 全身が一直線になるように、患部が重力で垂れ 下がらないよう水平を保つ。 |
| 共通事項 | 口輪(タオルで代用)。 | 痛みでパニックになった 愛犬が、不意に噛みつくのを防ぐため、 口輪(タオルや包帯で一時的に代用可能)を装着することを検討する。 |
搬送時の注意点
- 病院への事前連絡: 病院へ向かう前に必ず「骨折または脱臼の疑いがあること」「愛犬の状態」を電話で伝え、受け入れ準備をしてもらいましょう。
- 最短ルートで: 揺れが少ないよう、落ち着いた運転で、最短ルートを急いでください。
まとめ:緊急時に命を守る「3つの備え」

| 備えの柱 | 目的 | いますぐできる準備 |
| 1. 緊急情報 | パニック時でも即座に行動 できるようにする。 | 24時間対応の動物病院の 連絡先を携帯に登録し、 自宅の目立つ場所に 貼っておく。 |
| 2. 道具の準備 | 事故直後に安全に運搬できるようにする。 | バスタオルまたは毛布、 運搬用のクレート (または丈夫な段ボール箱)をすぐに取り出せる場所に 用意する。 |
| 3. 意識の準備 | 焦らず、冷静に状況を判断 できるようにする。 | 「骨折時は触らず、全身を固定して運ぶ」という 原則を常に覚えておく。 |
愛犬の骨折・脱臼は、一刻を争う事態です。
日頃からこれらの知識を頭に入れ、万が一の時に「何をすべきか」を明確にしておくことが、
愛犬の命を救い、回復を早める最大の備えとなります。


