
最近、お皿の水を何度もおかわりするようになった

トイレシートの交換回数が急に増えたけど、
これって病気のサイン?
愛犬が水をたくさん飲み(多飲)、その結果おしっこの量や回数が異常に増える(多尿)状態は、飼い主様が日々の生活の中で最も気づきやすい異変の一つです。
単に「喉が渇いているだけ」と見過ごされがちですが、この「多飲多尿」は、腎臓病、糖尿病、ホルモン異常など、生命に関わる重大な病気の初期兆候である可能性が非常に高いです。多飲多尿の原因を特定し、早期に治療を開始することが、愛犬の寿命とQOL(生活の質)を守る鍵となります。
この記事では、まず多飲多尿の科学的な定義と、自宅でできる多飲多尿の正確な測定方法を解説します。
次に、多飲多尿を引き起こす代表的な5つの重大な病気を解説し、それぞれの病気の症状の特徴を比較します。そして最後に、多飲多尿が疑われる際の病院での検査の流れと、家庭での注意点を徹底解説します。
多飲多尿の定義と、自宅での測定方法!
「いつもより多い」ではなく、「医学的な基準」を知ることが大切です。
多飲多尿の医学的な定義
わんちゃんの多飲多尿は、腎臓が尿を濃縮する機能が低下している、またはホルモンのバランスが崩れていることを示します。
- 多飲(水の飲みすぎ):1日に飲む水の量が体重1kgあたり100mlを超える状態。
- 多尿(おしっこの異常):1日に出す尿の量が体重1kgあたり50mlを超える状態。
自宅でできる!多飲量の正確な測定方法
動物病院で正確な情報を伝えるためにも、以下の方法で飲水量を測定し記録しましょう。
- 計測の準備: 普段使用している水皿とは別に、計量カップで正確な水量(例:1,000ml)を入れます。
- 24時間の記録: 朝の決まった時間から翌朝までの24時間で、愛犬が飲んだ水の量を記録します。
- 飲んだ量の計算: 入れた量から、残った量を引けば、飲んだ量が分かります。
- 計算: 飲んだ量(ml) ÷ 愛犬の体重(kg) = 1kgあたりの飲水量
例: 体重5kgの犬が1日で700mlの水を飲んだ場合。
700ml ÷ 5kg = 140ml / kg基準値(100ml/kg)を大きく超えているため、多飲の状態と判断できます。
多飲多尿から疑うべき、重大な病気リスト!
多飲多尿は、腎臓、副腎、膵臓、生殖器など、全身のさまざまな臓器の異常が原因で発生します。
| 病気の種類 | 異常をきたす臓器 | 多飲多尿のメカニズムと他の主な症状 |
| 1. 慢性腎臓病(腎不全) | 腎臓 | 腎臓の尿濃縮能力が低下し、水分を排出しすぎるため、水を多く飲む。他に食欲不振、嘔吐、口臭(アンモニア臭)が見られる。 |
| 2. 糖尿病 | 膵臓(インスリン) | 尿中に大量の糖分が排出され、浸透圧の関係で尿量が増える。体重減少、空腹感(食欲増加)を伴う。 |
| 3. 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群) | 副腎(コルチゾール) | ステロイドホルモンが過剰になり、腎臓での水分の再吸収が妨げられる。他に左右対称の脱毛、腹部の膨満(お腹が張る)が見られる。 |
| 4. 子宮蓄膿症(雌犬) | 子宮 | 細菌感染により子宮内に膿が溜まり、その細菌毒素が腎臓に影響を与え、多飲多尿を引き起こす。外陰部からの排膿、元気消失、発熱など、緊急性が高い。 |
| 5. 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺 | 代謝が過剰に上がり、腎血流量が増加することで尿量が増え、喉の渇きにつながる。体重減少、活動性の増加が見られる(※猫では一般的だが、犬では稀)。 |
多飲多尿が疑われる際の、検査と対応!
多飲多尿は自己判断で様子を見ず、速やかに病院を受診することが重要です。
病院での主な検査
- 血液検査: 血糖値(糖尿病)、腎臓の数値(BUN, Cre, SDMA)、肝臓の数値、電解質の異常などをチェックします。特に甲状腺ホルモンやコルチゾールの測定も必要となる場合があります。
- 尿検査: 尿の比重(濃さ)、糖、タンパク、細菌の有無などを調べます。尿比重が低い(薄い)場合は、多尿であることの裏付けになります。
- 画像診断(エコー): 腎臓や副腎、子宮(子宮蓄膿症の確認)などに異常がないか、形状や構造をチェックします。
絶対にやってはいけないこと
- 飲水制限: 「水の飲みすぎが原因だ」と自己判断し、愛犬が欲しがる水を制限することは絶対に避けてください。多飲は体内の水分が不足しているサインであり、制限すると脱水症状が急速に進行し、特に腎臓に負担をかけ、命に関わる可能性があります。
愛犬の健康を守るための、家庭での注意点!
愛犬の多飲多尿の原因を正確に把握し、その後の治療と生活管理を支えましょう。
原因に応じた食事管理
- 腎臓病: タンパク質とリンの含有量を制限した腎臓病用の療法食に切り替える必要があります。
- 糖尿病: 血糖値の急激な上昇を避けるため、食物繊維を多く含む療法食への切り替えと、厳密なインスリン注射の管理が必要です。
- クッシング症候群: 専門的な薬物治療と、獣医師の指示に従った食事管理を行います。
排泄環境の整備
多尿になると、トイレの回数が増え、夜間のおねしょや失敗が増えることがあります。
- トイレの増設: 広い範囲にトイレシートを敷くか、トイレの数を増やして、排泄しやすい環境を整えます。
- 介護用品の活用: 老犬や足腰が弱っているわんちゃんの場合は、オムツやマナーウェアの活用も検討し、皮膚炎予防のためにこまめに交換しましょう。
まとめ|「様子見」が命取りになる前に

| 緊急行動 | 目的と効果 | 飼い主がすべき具体的な行動 |
| 1. 飲水量の測定 | 「多飲」の状態であることを医学的に裏付け、獣医師に正確な情報を提供する。 | 24時間の飲水量を計測し、愛犬の体重と比較して記録する。 |
| 2. 飲水制限の禁止 | 脱水症状の急速な進行と腎臓への致命的な負担を防ぐ。 | 愛犬が水を欲しがるだけ与え、制限は絶対にしない。 |
| 3. 早期の受診 | 命に関わるホルモン異常や子宮蓄膿症などの重大な病気を早期に発見する。 | 測定後、速やかに血液検査と尿検査を受けられる動物病院を受診する。 |
多飲多尿は、愛犬の体が発する最も重要なSOSサインの一つです。このサインを見逃さず、迅速に行動することが、愛犬の未来を守ることにつながりますよ。


