まっ黒なタキシードにまっ白なシャツ。きりっと立った耳にまんまるの大きな目。
ボストン・テリアは、その姿から「タキシードを着た紳士」と呼ばれてきました。アメリカ生まれの小型犬で日本でも根強い人気があります。
でも、こんな疑問を持ったことはありませんか。
- フレンチ・ブルドッグと、どこが違うの?
- 「テリア」という名前なのにテリアらしくない気がする
- 鼻が短いけど、飼うときに気をつけることは?
この記事では、ボストン・テリアの生い立ちから性格、暮らし方の注意点まで順番にひもといていきます。
ボストン・テリアってどんな犬?基本データ
| 原産国 | アメリカ合衆国(マサチューセッツ州ボストン) |
| 大きさ | 体高およそ38〜43cm/体重およそ4.5〜11kg |
| 毛の長さ | 短毛(なめらかで光沢がある) |
| 毛色 | ブリンドル・黒・シールと、白のマーキング |
| グループ | ノン・スポーティング(愛玩・伴侶犬) |
| 平均寿命 | およそ11〜13年 |
体重の幅が広いのが特徴で公式には「小型」「中型」「大型」の3つの区分に分けられています。同じ犬種でも抱き上げられるサイズの子からしっかりした体格の子までいるということです。
謎①:なぜ「テリア」なのに、テリアらしくないの?
テリアといえば、ネズミやキツネを追いかける狩りの犬。気が強く、よく動き、頑固——そんなイメージがあります。ジャック・ラッセル・テリアやワイアー・フォックス・テリアが分かりやすい例ですね。
ところがボストン・テリアは、おっとりしていて人なつこい。テリアらしさをあまり感じません。なぜでしょうか。
答え:ルーツはテリアではなく、闘犬だった
ボストン・テリアの祖先は、19世紀のイギリスでブルドッグとテリアを掛け合わせて作られた犬だとされています。当時は闘犬として使われていました。
その子孫の一頭がアメリカのボストンに渡りそこで「闘う犬」から「一緒に暮らす犬」へと作り替えられていったのです。体はより小さく顔つきはより穏やかに。何世代もかけて攻撃性は薄れていきました。
つまり「テリア」という名前は、血筋の一部を示す名残にすぎません。中身はもう狩りの犬でも闘う犬でもなく、人のそばで暮らすための犬なのです。
1893年、アメリカンケネルクラブが正式に犬種として認めました。アメリカで生まれた犬種としては、もっとも早い時期に公認されたうちの一つです。「アメリカの紳士(American Gentleman)」という愛称もこのころから広まりました。
謎②:フレンチ・ブルドッグと何が違うの?
散歩中に「フレブルですか?」と聞かれる——ボストン・テリアの飼い主さんがいちばんよく経験することかもしれません。
どちらも鼻が短く、耳が立っていて、白黒の子が多い。似ているのは当然でもとをたどればどちらもブルドッグの血を引いています。ただ、見分けるポイントははっきりあります。
| 見るところ | ボストン・テリア | フレンチ・ブルドッグ |
|---|---|---|
| 耳の形 | 先がとがった三角形 | 先が丸い「コウモリ耳」 |
| 体つき | 細身で脚が長め。すらっとしている | がっしりして重心が低い |
| 毛色の出方 | タキシードのように白の位置が決まっている | クリーム・フォーンなど色が幅広い |
| 体重 | およそ4.5〜11kg | およそ8〜14kg |
| 顔のしわ | 少なめ | 多め |
いちばん分かりやすいのは耳の形です。とがっていればボストン・テリア、丸ければフレンチ・ブルドッグ。次に脚の長さを見てください。すらっとして見えるならボストン・テリアです。
謎③:あの「タキシード柄」はどうやって決まる?
ボストン・テリアの白い部分はどこにでも出るわけではありません。犬種の基準では白が入る場所がある程度決まっているとされています。
- 鼻すじから額にかけての白いライン
- 口のまわり
- のどから胸にかけて
- 前足の先
この配置が、シャツと蝶ネクタイのように見えることから「タキシード」と呼ばれるようになりました。白の入り方は一頭ごとに違うので、同じ犬種でも顔つきの印象がずいぶん変わります。
なお、白が体の大部分を占める子や逆にほとんど白が入らない子もいます。これは健康とは関係ありません。ただし、白い部分が非常に多い子は聴覚に影響が出ることがあると指摘されており気になる場合は迎える前にブリーダーや獣医師に相談してください。
性格|「紳士」と呼ばれる理由
| 性格 | 暮らしの中では |
|---|---|
| 人が好き | 来客にも友好的。番犬には向かない |
| あまり吠えない | 集合住宅でも飼いやすい |
| 賢く、覚えが早い | しつけが入りやすい |
| 陽気で遊び好き | 子どもの相手も上手なことが多い |
| 感受性が強い | 強く叱ると萎縮しやすい |
「紳士」と呼ばれるのはむやみに吠えず、誰にでも礼儀正しく接するところから来ています。闘犬の血を引きながらここまで穏やかになったのは、人が長い時間をかけて選び続けてきた結果です。
ただし、おとなしいだけの犬ではありません。遊ぶときは全力です。テリアらしい活発さはちゃんと残っています。
飼うときに知っておきたい3つのこと
① 暑さにとても弱い
ボストン・テリアは短頭種——鼻の短い犬種です。犬は口で呼吸して体温を下げますが鼻の穴や気道が狭いためその働きがうまくいきません。
- 夏の散歩は早朝と日没後に。日中は避ける
- アスファルトに手の甲を5秒当てて熱ければ散歩をやめる
- 室内はエアコンで26〜28度を目安に保つ
- いびきやゼーゼーという呼吸が続くときは受診する
熱中症は短時間で命に関わります。「少しくらい大丈夫」と思わないでください。
② 大きな目は、けがをしやすい
ぱっちりした目は魅力ですが顔から前に出ているぶん傷つきやすいという弱点があります。草むらで遊んだあとや他の犬とじゃれたあとは、目やにや充血がないか見てあげてください。
目をしょぼしょぼさせる、前足でこすろうとする、白く濁っている——こうしたときは早めに動物病院へ。目のトラブルは進行が速いことがあります。
③ 短毛でも、お手入れは必要
毛が短いので手間はかかりませんが抜け毛はしっかりあります。週に2〜3回、やわらかいブラシでなでるように整えてあげると部屋の抜け毛がぐっと減ります。
また、顔のしわの間は汚れがたまりやすいところ。やわらかい布で、こすらずにそっと拭き取ってください。しわが少ない犬種ですがまったくないわけではありません。
こんな人に向いています
向いている
- マンションなど鳴き声に気をつかう住まいの方
- お手入れの手間をかけすぎたくない方
- いつもそばにいてくれる犬を求めている方
- 夏場はエアコンをしっかり使える環境の方
向いていないかもしれない
- 番犬がほしい方(人が好きすぎて番犬にはなりません)
- 長時間の留守番が続く方(さみしがりやです)
- 真夏に外で長く一緒に活動したい方
- いびきや呼吸音が気になる方
よくある質問(Q&A)
Q. 散歩はどれくらい必要ですか?
A. 1回20〜30分を1日2回が目安です。運動量は多くありませんが頭を使う遊びを喜びます。おやつを隠して探させる、簡単な芸を教えるなど短い時間でも満足度が上がります。
Q. いびきをかくのは病気ですか?
A. 短頭種は構造上いびきをかきやすく、それ自体はよくあることです。ただし起きているときもゼーゼーいう、舌が紫がかる、運動をすぐ嫌がるといった様子があれば呼吸の通り道に問題があるかもしれません。獣医師に相談してください。
Q. 子どもがいる家庭でも大丈夫?
A. 温厚な犬種なので相性は良いほうです。ただし目が出ているぶん、指が当たると傷つきやすいので顔まわりの触り方は必ず教えてあげてください。
Q. 飛行機に乗せられますか?
A. 短頭種は預かりを断られることが多いです。呼吸への負担が大きく事故のリスクがあるためです。移動を伴う暮らしを考えている方は事前に航空会社の規定を確認してください。
まとめ|闘う犬から、そばにいる犬へ
- 「テリア」の名は血筋の名残。中身は穏やかな伴侶犬
- フレンチ・ブルドッグとの違いは耳の形と脚の長さ
- 白の入り方には決まりがあり一頭ずつ表情が違う
- 暑さと目のけがには、いちばん気をつける
闘犬として生まれた犬が、100年以上をかけて「アメリカの紳士」と呼ばれるまでになりました。その歴史そのものが人と犬が一緒に歩いてきた道のりを映しています。
あのまんまるの目でじっと見つめられたらきっと理由が分かるはずです。

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