
うちの子があくびをしたのは、
眠たいからだよね?

ご飯前でもないのに舌をペロペロするのは、
ただ口が乾いているだけ?
愛犬の行動を、私たち人間の常識に当てはめて解釈していませんか?
わんちゃんが示す「あくび」や「舌なめ(ぺろぺろ)」といった一見何気ない行動は、実は彼らが「今、私は緊張しています」「この状況は不安です」と、あなたや周囲に送っているSOSサインで
あることがほとんどです。
これらは動物行動学において「カーミングシグナル(Calming Signal/鎮静行動)」と呼ばれ、自分自身や相手を落ち着かせるために、わんちゃんが生まれつき持っている「犬語」です。
この大切なサインを飼い主が見逃してしまうと、愛犬のストレスは蓄積し、最終的に無駄吠えや噛みつきなどの問題行動につながる可能性があります。
この記事では、愛犬が本当に伝えたい「ストレスサイン3選」を徹底解説します。
これらのサインを正しく読み取り、愛犬が安心して暮らせる環境を整えてあげましょう。
カーミングシグナルとは?その科学的役割!
カーミングシグナルは、わんちゃんが群れの中で、争いを避けるために何万年もの進化の中で獲得してきた、平和的なコミュニケーションツールです。
- 役割1:自分を落ち着かせる(セルフ・カーム)
- 不安や緊張を感じたとき、この行動をすることで、自分の心拍数を下げ、興奮を鎮めようとします。
- 役割2:相手を落ち着かせる(ディ・エスカレーション)
- 相手(人間や他のわんちゃん)のプレッシャーや怒りを感じたとき、「私は敵意がありませんよ」「落ち着いてください」というメッセージを送ることで、状況のエスカレートを防ごうとします。
これらの行動は、わんちゃんが「葛藤(コンフリクト)」を抱えている証拠であり、「どうしていいかわからない」「不安だ」という心の叫びなのです。
本当に伝えたい、ストレスサイン 3選!
特に誤解されやすく、実は高い確率でストレスを示している3つのサインを解説します。
【サイン1】場所を問わない「あくび」
- 一般的な誤解: 眠い、退屈。
- 真のメッセージ: 「強い緊張」「困惑」「早く終わらせてほしい」
- 具体例:
- 動物病院の待合室や診察台の上。
- 飼い主にきつく叱られた後や、知らないわんちゃんと対面したとき。
- 強く抱きしめられすぎたとき(拘束への不安)。
- 解説: 眠くない状況でのあくびは、脳に酸素を送り、強制的にリラックスを促すためのセルフ・カーム行動です。
これは、愛犬がその状況に対してストレスを感じ、早く次の行動に移りたいと願っている証拠です。
【サイン2】頻繁な「舌なめ・リップリッキング」
- 一般的な誤解: お腹が空いた、口元が乾燥している。
- 真のメッセージ: 「不安」「服従」「緊張の緩和」
- 具体例:
- 飼い主が愛犬の顔を覗き込んだときや、手を頭上に伸ばしたとき。
- 知らない人に撫でられた後や、カメラのレンズを向けられたとき。
- 叱られた直後に、飼い主の口元や手をペロペロ舐める。
- 解説: 舌なめは、相手への服従や降参を意味することが多く、「あなたに逆らうつもりはありません」「私を攻撃しないで」というメッセージです。
これは、不安や恐怖を感じたわんちゃんが最も頻繁に使うシグナルの一つです。
【サイン3】「目をそらす・体の向きを変える」
- 一般的な誤解: 集中力がない、逃げたいだけ。
- 真のメッセージ: 「敵意のなさ」「穏便な解決を望む」
- 具体例:
- 他のわんちゃんとすれ違うとき、急に横を向く。
- 飼い主が厳しく指示を出したとき、目を合わさず、顔を横に逸らす。
- 写真撮影などで真正面から見つめられたとき。
- 解説: わんちゃんにとって、正面からの凝視(アイコンタクト)は威嚇や挑戦を意味します。そのため、目をそらしたり、体全体を相手から逸らしたりする行動は、「私はあなたに争うつもりはありません」「私は平和主義者です」という、最高の穏便な解決の提案なのです。
愛犬のSOSに気づくための「飼い主の正しい対応」
愛犬がカーミングシグナルを発しているとき、飼い主さんが取るべき行動は、「状況を理解し、プレッシャーを取り除くこと」です。
冷静にトーンを下げる
- 愛犬がストレスサインを出したら、甲高い声や大きな声で話しかけるのを止め、低い落ち着いた声(トーン)で「大丈夫だよ」と声をかけます。
低い声はわんちゃんにとって、安心感を与えるシグナルです。
物理的な距離を取る
- その場から愛犬を離します。不安の原因(知らない人、うるさい音、他のわんちゃん)から
物理的に距離を取ることで、愛犬は「危険が去った」と感じ、緊張が解けます。 - 抱擁を避ける: 愛犬が不安を感じているときに強く抱きしめるのは、拘束となり、さらにストレスを増大させるNG行動です。
優しく背中を撫でる程度に留めましょう。
飼い主自身も「犬語」を使う
- 愛犬がストレスサインを出したとき、飼い主さんも意図的に目をそらしたり、大きなあくびをしたりといったカーミングシグナルを使うことで、「私も落ち着いているよ」「あなたを叱るつもりはないよ」というメッセージを愛犬に伝えることができます。
これにより、愛犬の安心感は劇的に高まります。
まとめ:カーミングシグナルから読み解く愛犬の心!

| サインの行動 | 人間のよくある誤解 | 犬が本当に伝えたいメッセージ | 飼い主の対応 (実践) |
| あくび | 眠い、退屈 | 「強い緊張」「困惑」 | 状況を中断し、愛犬がリラックスできる場所に移動させる。 |
| 舌なめ | 食べ物が欲しい、乾燥 | 「不安」「服従の意思」 | 愛犬の顔を覗き込んだり、頭を上から触ったりするのをやめる。 |
| 目をそらす | 集中力がない | 「威嚇の意思はない」「平和を望む」 | 真正面からの凝視を避け、体を斜めにして愛犬の言葉を尊重する。 |
愛犬の幸せは、飼い主が彼らの言葉(カーミングシグナル)を理解し、適切に応えることにかかっています。
これらのサインを「問題行動」ではなく「SOS」として捉え直し、愛犬との揺るぎない信頼関係を築いていきましょう。
優しく伝え、不安や緊張の原因を取り除いてあげることが、愛犬の心を守ることに繋がりますよ。


