
飼い主さん
まだ日差しが強くないから大丈夫だろう

飼い主さん
日陰の道を選んだから平気
夏の散歩において、飼い主さんが最も注意すべきは、地面の温度です。
わんちゃんの肉球はクッション性があり頑丈に見えますが、汗腺がなく、熱を逃がす機能を持っていません。
そのため、高温のアスファルトに直接触れると、人間の皮膚よりも速く、深刻なやけどを負って
しまう危険性があります。
アスファルトは、気温が30℃の日でも、表面温度は55℃〜65℃に達することが知られています。
この温度は、卵が目玉焼きになる温度に近く、わずか数分で重度のやけどを引き起こします。
肉球のやけどは、愛犬に激しい痛みを与えるだけでなく、歩行困難や感染症のリスクを高め、
長期的な治療が必要になります。
この記事では、肉球やけどの段階別症状を理解し、万が一の際に愛犬の痛みを和らげ、
重症化を防ぐための「緊急冷却法」を徹底解説します。
知っておきたいアスファルトの「危険な温度差」
肉球は、人間が靴を履かないで素足で立っているのと同じ状態です。
アスファルトがどれほど危険な熱を持つのか、そのメカニズムを理解しましょう。
地面が熱を蓄えるメカニズム
- 気温と地面の温度差: 一般的に、気温が25℃を超えると、日向のアスファルトの表面温度は
急激に上昇し、気温+20℃以上になることが普通です。 - 熱の放出: アスファルトは熱を吸収し、一度温まると夜になってもなかなか冷めません。
日が沈んだ後でも、アスファルトの表面温度がわんちゃんの肉球にとっては危険な高温である可能性があります。
| 環境 | 気温の目安 | アスファルトの 表面温度の目安 | やけどのリスク |
| 炎天下 | 30℃ | 55℃〜65℃ | 数分で重度のやけど |
| 日陰 | 30℃ | 40℃前後 | 長時間の散歩で軽度のダメージ |
| 安全圏 | 20℃以下 | 30℃以下 | 低い |
肉球やけどの「段階別症状」を見極める!
愛犬がやけどを負った場合、痛みで歩くのを嫌がったり、足を舐めたりするサインが見られます。肉球の状態をチェックし、重症度を把握しましょう。
軽度(I度熱傷):初期段階の損傷
- 症状: 肉球が赤くなる、触ると熱を持っている、軽度の腫れが見られる。
- 愛犬の様子: 足を引きずる、歩くのを嫌がる、患部を頻繁に舐める。
中度(II度熱傷):水ぶくれと剥離
- 症状: 肉球の表面に水ぶくれ(水疱)ができる、肉球の皮がめくれかけている、または実際にめくれて下層の皮膚が露出している。
- 愛犬の様子: 痛みが激しく、足に体重をかけられない。
出血が見られることもある。
この段階では感染症のリスクが非常に高いため、緊急の治療が必要です。
重度(III度熱傷):壊死と神経損傷
- 症状: 肉球が白や黒に変色し、乾燥して硬くなっている。
血管や神経が損傷しているため、意外にも痛みが少ない場合がありますが、
これは最も危険な状態です。 - 愛犬の様子: ショック状態になることがある。
この段階では、皮膚移植などの専門的な治療が必要になる可能性が高いです。
すぐに実行!やけどを負った時の「冷却法と応急処置」
愛犬がやけどを負ったと気づいたら、すぐに冷却することが最優先です。
冷却は、熱が体の奥に侵入するのを防ぎ、痛みを和らげる効果があります。
【最優先】熱源からの避難
- 直ちに日陰や芝生、土の上に愛犬を移動させます。アスファルトから離れることが、
それ以上の損傷を防ぐ最初のステップです。
【緊急冷却】清潔な流水で10〜20分
- 方法: 清潔な冷水(水道水)を患部に10分から20分間、かけ続けます。
流水冷却は、やけどの熱を奪う最も効果的な方法です。 - 注意点: 氷水や冷却スプレーは絶対に使用しないでください。
冷やしすぎると、かえって血行不良を引き起こし、やけどが悪化したり、凍傷を負ったりするリスクがあります。 - 全身冷却は避ける: 肉球だけを冷やし、愛犬の体温が下がりすぎないように注意しましょう。
清潔にして保護
- 患部を冷やした後、清潔なガーゼやタオルで水分を優しく拭き取ります。
- 清潔なガーゼやタオルで軽く覆い、これ以上地面に触れたり、愛犬が舐めて悪化させたりするのを防ぎます。
動物病院への連絡
- 応急処置が完了したら、すぐに動物病院に連絡し、受診します。
軽度に見えても、肉球のやけどは細菌感染を起こしやすいため、自己判断で済ませては
いけません。
絶対に防ぐ!やけどを防ぐための「安全な散歩の3原則」
やけどは、正しい予防知識さえあれば100%防げる事故です。
この3原則を徹底しましょう。
「5秒ルール」の厳守(最も重要)
- 原則: 散歩に出る直前、飼い主が手の甲をアスファルトに5秒間当てます。
- 判断基準: 5秒間熱くて耐えられないと感じたら、わんちゃんの肉球にとっても危険です。
その日は散歩を控えましょう。
散歩の「時間帯」を徹底的にずらす
- 夏場(5月〜9月)の鉄則: 散歩は、地面の熱が完全に冷めている時間帯に限定します。
- 早朝: 日の出前〜日の出直後(目安として午前6時半まで)
- 夕方: 日が完全に沈み、2時間以上経過した後(目安として午後7時半〜8時以降)
- 早朝: 日の出前〜日の出直後(目安として午前6時半まで)
散歩場所とツールの活用
- 芝生・土の道: アスファルトではなく、熱がこもりにくい芝生や土の道を選びましょう。
- 日陰の道: 日向と日陰では地面の温度が大きく異なります。
可能な限り日陰のルートを選びます。 - 犬用靴(ドッグシューズ): 地面の温度が高いことが予測される場合や、愛犬がすでに軽度のやけどを負っている場合は、犬用靴を履かせることも効果的な予防策です。
ただし、靴に慣らすトレーニングが必要です。
まとめ:肉球やけど防止の「3つの心得」

| 心得 | 目的と確認事項 | 緊急時の対応 |
| 1. 地面温度の意識 | アスファルトは気温以上に 熱いことを知る。 | 「5秒ルール」を徹底し、 少しでも熱ければ散歩を 中止する。 |
| 2. 早期発見と避難 | やけどのサイン (赤み、舐める、 足を引きずる)を 見逃さない。 | すぐに日陰へ避難させる。 |
| 3. 緊急冷却の知識 | 熱が奥に入るのを防ぎ、 痛みを和らげる。 | 氷水は使わず、清潔な冷水で10〜20分間、患部を冷やし 続ける。その後、速やかに 病院へ。 |
愛犬の肉球を守ることは、夏の健康管理の基本です。
たった一度の油断が愛犬の生涯の歩行に影響を与える可能性があることを理解し、愛情をもって
安全な散歩を心がけましょう。


